アンティーク様式第五弾、独自路線のイギリス
前回まで、
オーストリア・ドイツのヒストリスムス、フランスのセカンドエンパイア と、
19世紀後半から始まった古典様式のリバイバルについてご紹介してきましたが、
今回はイギリスの古典様式のリバイバル、ビクトリア様式です。
ビクトリア様式は古典様式のリバイバルですが、
他のヨーロッパ諸国と比べやや早期に始まっています。
しかし基本的には19世紀後半から20世紀初頭にかけての再興期間でしたので、
概ね似たような流行となっています。
ただしさすが島国、
ヒストリスムスやセカンドエンパイアは若干の違いはあるものの、
似たり寄ったりの部分が多いのですが、
ビクトリア様式だけは一目でわかります。
一言で言えば派手です。
イギリスの独自路線が垣間見えるスタイルです。
基本的にはリバイバルのビクトリア様式
ビクトリア様式はイギリスを代表するアンティークスタイルです。
比較的最近の年代であることと価格が安価であることから手に入れやすいので知名度が高いということもありますが、
イギリス最高の時代であるビクトリア期はイギリスを象徴するスタイルがたくさん生まれた時代でもあります。
前述した通り、
流行の基盤は古典様式のリバイバルがビクトリア様式です。
ヒストリスムスやセカンドエンパイアと同様、
昔上流階級の人たちだけが楽しんでいたインテリアが、
産業革命の影響で中流階級の人たちも楽しめるようになり流行したスタイルです。
建築物やインテリア、服飾など多岐に渡って流行したビクトリアスタイルですが、
色鮮やかな壁紙も流行したのがビクトリア期です。
ビクトリア様式の特徴
さて、イギリスのビクトリア様式の特徴ですが、
こちらも基本的にはヒストリスムスやセカンドエンパイアと同じです。
古典的なスタイルが一番の特徴です。
ビクトリア様式を詳細にみてみると、
ネオ・ゴシックやネオ・ロココスタイルが多く、
細かな装飾や植物や動物のモチーフが多くデザインされていること、
金属やガラスを家具の一部にも使用することから豪華さが際立っていること、
以上から派手めなスタイルであると言えます。
また女性的なデザインであるとも言えます。
このビクトリア様式には前期と後期とで分けて考えることが多いので、
前期後期に分けて詳細をご紹介したいと思います。
(中期もある分野があるのですが、ややこしくなるので前後期にだけ分けます。)
前期ビクトリア
前期ビクトリアは、
19世紀半ばから19世紀後半頃に見られたスタイルで、
古典様式、特に、ゴシックとロココのリバイバルが強く表れているスタイルです。
前期ビクトリアスタイルが登場するまでのリージェンシースタイルは、
至ってシンプル、直線的なデザインが多かったのですが、
打って変わって曲線的で装飾の多いネオ・ゴシックやネオ・ロココが流行しました。
それまでのシンプルさを打破するかの如く、
かなり装飾の多いインテリアが多くみられるのが前期ビクトリアの特徴です。
また、大量生産が始まった時期でもあるので、
かなりかっちりと規則性のある装飾が多いのも特徴です。
前期ビクトリア様式はファンも多いのであまりこんなこと言えないのですが、
その細かい装飾から別名埃キャッチャーとも言われています。
後期ビクトリア
後期ビクトリアは、
19世紀後半から20世紀初頭頃に見られるスタイルです。
20世紀初頭の時代をエドワードスタイルと呼ぶ場合もあります。
後期ビクトリア期では、大量生産がより定着し、
粗悪なインテリアもたくさん出回った時期でもあります。
ただその大量生産のおかげで色々な層の人たちにインテリアが生活の一部として定着した時期でもあります。
後期ビクトリアになると、
過度な装飾は抑えられ、色彩が豊かになっていきます。
この後期ビクトリア期に色とりどりの壁紙が用いられるようになり、
一目見ただけで鮮やかさが伝わってくるようなインテリアが流行するようになりました。
また過度な装飾が抑えられてきたため、
ややシンプルで使いやすいデザインが増えていきました。
それでもやはり他のスタイルと比較すると埃がたまりやすいデザインではあります。


当店で取り扱いのあったビクトリア様式の家具の一部の写真です。
木の細かい装飾が印象的です。
バロックやロココに比べると線が若干太く、
ややしっかりした印象ですが、
古典的な印象はこの時期だとビクトリア様式が一番強いのではないかなと思います。
…この繊細な装飾の隙間に埃がたまるのです。
全てが全てこのような装飾たっぷりの家具ばかりではないのですが、
やはりビクトリア様式といえばこのような装飾が多い家具を思い浮かべる人が多いと思います。
飾りを取るか埃と闘う覚悟を決めるか…
ちょっと手のかかるアンティークです。
ビクトリア様式の代表作
ではビクトリア期に建築された代表的な建築物をご紹介したいと思います。
ビクトリア様式はイギリスのアンティーク様式ですが、
北米などにも広がったスタイルでもあります。
ただ、今回はイギリスに絞りたいと思うので、
イギリスの代表的な建物のみご紹介したいと思います。
- セント・パンクラス駅、ロンドン
- 自然史博物館、ロンドン
- ウェストミンスター宮殿(ネオ・ゴシック)
- ロイヤル・アルバート・ホール、ロンドン
- リヴァプール大学、リヴァプール(ネオ・ゴシック)
ビクトリア朝はイギリスの絶頂期と言われるのが頷けるほど、
現在でも有名な観光名所やパブ、レストランなどはビクトリアスタイルが多く残っています。
イギリスアンティーク=ビクトリアと考えられるのも納得です。
リバイバルのお話はビクトリアで一旦休題
このビクトリア様式で19世紀後半頃に始まったリバイバルのお話は一旦おしまいです。
各国若干の違いはあるものの、
ヨーロッパ中が古典様式に再び憧れて流行した、そんな時代でした。
ヒストリスムスとセカンドエンパイア、ビクトリアのように、
各年代のスタイルは基本的にはオーストリア・ドイツとフランス、イギリスと異なった名称で呼ばれるので、
これからの記事もこの3つの国ごとに分かれていくことになります。
…イタリアだけ仲間はずれなのは、
イタリアだけ年代ではなくて街ごとにスタイルが分かれていて、
ざっくりとしたことしか言えないからです。
いつかそのざっくりを一塊でお話しできることを祈って…
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