ビーダーマイヤー様式について

アンティーク様式についての第六弾、ビーダーマイヤー様式

 

イギリスのビクトリア様式 まで長々と古典様式のリバイバルについて書き連ねましたが、

このリバイバルの前にオーストリアやドイツで起きたブーム、

ビーダーマイヤー様式についてご紹介したいと思います。

 

ビーダーマイヤー様式もやや古典様式の再興に近いのですが、

見た目がかなり異なり、特徴的なので、

アンティークにもこんなスタイルがあるんだなと再発見されるかもしれません。

 

ヒストリスムス やセカンドエンパイア同様、

同じ時期に同じような流行がフランスでも起きているのですが、

こちらについては後述します。

 

イギリスも若干独特ではありますが似ているので、

こちらについてもまた後述していきたいと思います。

 

 

では、アンティーク愛好家からは賛否両論あるビーダーマイヤー様式を少し掘り下げて見てみたいと思います。

 

オーストリア・ドイツを代表するビーダーマイヤー

 

ビーダーマイヤー様式、

このアンティーク様式の名称を日本国内ではあまり耳にすることはないと思います。

 

専門家や勉強しているのであればともかく、

世間一般には広くは知られていないアンティーク様式の一つです。

 

 

ただビーダーマイヤーの本場、

オーストリアやドイツではアンティークの基本と言っていいほど、

色々なアンティークショップで見ることが出来ます。

 

ビーダーマイヤー様式は1815年~1830年頃まで続いたアンティーク様式です。

 

ここでアンティーク様式と限定して言ってしまいましたが、

ビーダーマイヤーは、

インテリアや建築、ファッションのみならず、

文学や思想、生活そのものをビーダーマイヤーと呼ぶため、

ビーダーマイヤー=インテリアと結びつけるのは狭すぎると言えます。

 

ビーダーマイヤーの基本的な思想が、

市民階級の自由で開放的な芸術への欲求と言うのでしょうか、

中流階級の芸術や文学、インテリアなどへの追求の形がビーダーマイヤーです。

 

 

ここで今一度アンティーク様式、インテリアスタイルに焦点を戻したいと思います。

 

ヒストリスムスとビーダーマイヤー、

主軸となっている人が中流階級の人と同じですが、

ヒストリスムスが産業革命の恩恵を受けた中流階級向けのインテリアスタイルであるとすれば、

ビーダーマイヤーはフランス革命後の中流階級が先導したインテリアスタイルであると言えます。

 

 

このビーダーマイヤー様式には他とはかなり明白な違いがあるのですが、

ここからはビーダーマイヤー様式の特徴について見ていきたいと思います。

 

ビーダーマイヤー様式の特徴

 

ビーダーマイヤー様式は、

それまでのインテリアスタイルとは異なり、

中流階級が中心に流行したスタイルで、

使いやすさの中に美しさを求めたスタイルと言えます。

 

この使いやすさという部分が賛否両論を巻き起こしている部分でもあるのですが、

他のアンティーク様式と比べ扱いやすい家具が多いのが特徴です。

 

素材を活かしたシンプルさ

ビーダーマイヤー様式の家具やインテリアは扱いやすい、

要するにとにかくシンプルです。

 

ビーダーマイヤーの根源が、

身近で日常的な物に目を向けるという思想から生まれたため、

繊細で壊れやすく、掃除もしにくい、そういった家具がありません。

 

この繊細ではなく、装飾も控えめであるところが、

どうやら一部のアンティーク愛好家の方には受け入れられないポイントの様です。

 

確かにビクトリアやバロック、ロココなどと比較すると物足りなさはあるかもしれません。

 

しかし、ただシンプルなだけではなく、

シンプルで使いやすい中にも美しさを求めたビーダーマイヤー様式には、

木材などの素材の美しさを存分に引き出した家具も多く存在します。

 

ビーダーマイヤー期にはマホガニーのような手に入りにくい高級な木材ではなく、

チェリーやオーク材などのヨーロッパで手に入りやすい木材を使用し、

その木材にシェラックなどのワックスがけや研磨などを施し、

見た目にも鮮やかで輝くような家具が誕生します。

 

ビーダーマイヤー様式の家具には、

木材の色の特徴やシェラックの様な暖色のワックスの色が影響しているのか、

温かみのある家具が多い印象があります。

ビーダーマイヤー
ビーダーマイヤー

二つの写真はビーダーマイヤー様式の家具です。

 

特にこのチェストはビーダーマイヤー様式らしい美しいチェストです。

 

とてもシンプルで温かみのあるデザインは、

現代のインテリアにも合いやすく、

 

オーストリアやドイツでは今でも日常的に取り入れられているアンティーク様式です。

 

古典的なスタイルも加えてエレガントに

ビーダーマイヤー様式の家具は単にシンプルなだけではなく、

古典様式を部分的に簡単に取り入れています。

 

古典様式を取り入れるとはいえ、

バロックやロココの様な豪華で繊細な様式ではなく、

古代ローマの様な直線的で重厚なデザインが用いられました。

 

シンメトリーで直線的、しっかりとした雰囲気の古代ローマのデザインは、

ビーダーマイヤー様式をより美しく、より芸術的に仕上げています。

 

ビーダーマイヤー

ビーダーマイヤーのデスクです。

 

チェリー材で出来たデスクの足が、

少しローマ神殿の柱の様な雰囲気を思わせ、

シンプルかつ美しいデスクとなっています。

 

ビーダーマイヤー様式の代表作

 

ビーダーマイヤーには建築物のみならず、

色々な芸術作品が生まれました。

 

中でも代表的な物をこれより紹介していきます。

 

ビーダーマイヤー様式の建築物

  • ヨーゼフシュタット劇場(ウィーン)
  • サンクト・マルクス墓地(ウィーン)
  • リヒテンタール教会の中庭(ウィーン)

ビーダーマイヤーの代表的なアーティスト

  • ヨーゼフ・コルンホイゼル(建築家)
  • ヤコブ・アルト(画家)
  • カール・シュピッツウェク(画家)

ビーダーマイヤーは150年以上愛され続けている様式

 

オーストリアやドイツで150年以上も愛され続けているスタイルのビーダーマイヤー様式は、

より日常に根付いているインテリアスタイルと言えます。

 

アンティーク様式というのが何となく気が引けるほど、

今でもオーストリアやドイツ中でたくさん見ることが出来ます。

 

日本ではあまり馴染みのないアンティーク様式ですが、

アンティークと考えずに、

少し良い家具を買うのと同じような感覚で、

ビーダーマイヤー様式を自宅の一室にも取り入れてみてはいかがでしょうか。

 

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